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About

 

名も無き子。傘の下から。甘い音を聴いて。

 


ねがいごと

 

呼ばれるほどではなくて、だってそもそも名前なんて無かったから。

でも、今だけ。名前ができて、呼んでくれたら。確かめるように、何度も。

いつか、やっぱりいなくなっても、思い出せるかもしれない。どこかに、小さく、

小さく、五感を通り抜けて。仮初の名だとしても、生きていたこと、そこに在ったこと。

誰かが、数珠繋ぎ、巡るように、また会えるかもしれない。小さな、この町で。

だから、何度も、何度も、振り返ろうと。その色、その記憶が、褪せても、

呼ばれたからには、また、再会を望むように。望まれるように。

​ねごと

 

 

from 2012.6

 

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